自分の生活や心境の軌跡にあまりにも似ていることに、驚いた。定年おやじはみんな同じなのだと、安心もした。
渡辺淳一氏の小説「孤船」を読んだ感想である。副題は「定年退職して始まる本当の孤独!」。サラリーマンの寂寥感が描かれている。「孤船族」という言葉も生まれたようだ。
それにしても、組織を離れた男はかくも哀しいものなのか?
「バラ色の第二の人生のはずが・・・」、「暇という悪夢におしつぶされそうに・・・」「朝から行く場所がない・・・」。
「よし、今日から新しく生きていこう。とにかくいまから一歩踏み出してみよう。・・・」。ラストの主人公の言葉である。
ようやく自由人になれたのだ。世間体や見栄、しがらみにとらわれず、自由に堂々と生きてゆきたい。