8月26日は54歳で亡くなった父の52回目の命日だった。
年々、父の記憶が薄れる中、古いアルバムに父が釣りをするモノクロ写真を見つけた。
この写真が当時の思い出をたぐりよせてくれた。
時は昭和30年代前半。海釣りに夢中だった。「お盆の間は殺生をしてはいけない」という母の言葉も耳に入らなかった。
父とよく近くの海に釣りに行った。夜釣りも楽しかった。ウナギやたこの捕り方、伝馬船の櫓の漕ぎ方などを教えてくれた。
すぐ近くが瀬戸内の海。潮が引くと遠浅の干潟が現れた。あさり、クルマエビ、シャコ、たこ、はぜ、チヌ、ウナギ、カブトガニ・・・。魚介類の宝庫だった。
小舟で沖の岩場まで父と釣りに行った帰り、海が急に荒れ始め、櫓でこぐ小舟はなかなか岸に近づけなかった。とても怖かったが、父は冷静に櫓を操り乗り切った。海軍で鍛えた父がとても頼もしかった。
夏の夜は外に背もたれイスを持ち出し、星空を眺めながら涼んでいた父。
周囲は田んぼでひんやりした風が心地良かった。
思えば、豊かな自然に恵まれた贅沢な日々だった。